大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 平成11年(ワ)3062号 判決 2000年4月20日

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

原告が破産者株式会社三和衣料に対し貸付金債権七〇六九万八六五八円のうち異議にかかる三五〇万円を破産債権として有することを確定する。

第二  事案の概要

本件は、連帯保証人兼担保提供者から原告に差し入れられた担保不動産が第三者名義に変更された後に、その第三者から破産債権の一部が弁済されたところ、この弁済が連帯保証人兼担保提供者からの弁済ではなく、担保不動産の取得者という第三者からの弁済であるとして、破産管財人からその届出債権に異議を述べられた破産債権者が、その部分の破産債権の確定を求めている事案である。

一  争いのない事実等(証拠によって認定する場合は証拠を示す。)

1  京都市下京区諏訪町通五条上る高砂町三八〇番地訴外株式会社三和衣料(以下「破産会社」という。)は、京都地方裁判所平成一〇年(フ)第一四六三号破産事件において、平成一一年三月二目午後五時〇分に破産宣言を受け、被告がその破産管財人に就任した。

2  原告(京都支店)は、破産会社に対し、平成一〇年三月三一日、手形貸付により、平成一〇年四月三〇日一括弁済の約定により金七四〇〇万円を貸渡した。

しかし、破産会社は右期日に右貸付金を返済せず、その後一部弁済内入充当を経て、右破産宣告時においては、右貸付金の残元金は七〇六九万八六五八円が未払であった。

3  そこで、原告は、平成一一年四月一六日、以下の債権について破産債権者として届出をした。

<1> 手形貸付金七〇六九万八六五八円(以下「本件破産債権」という。)

<2> <1>の貸付金に対する遅延損害金八二七万〇七七四円

<3> 劣後債権として金額未確定の遅延損害金

4  被告は、平成一一年八月三〇日の債権調査期日において、本件破産債権中三五〇万円について異議を述べた。

5  被告が右異議を述べた理由は、原告は、

<1> 所在   京都市左京区下鴨北園町

地番   一〇二番二

地目   宅地

地積   五七五・八三平方メートル

<2> 所在   京都市左京区下鴨北園町一〇二番地二

家屋番号 一〇二番二

種類   居宅

構造   鉄筋コンクリート造スレート葺二階建

床面積  一階 二〇二・九八平方メートル

二階 一六八・七六平方メートル

の不動産(以下「本件不動産」という。)について、訴外高橋喜代恵(以下「喜代恵」という。)及び訴外高橋京一(以下「京一」という。)らから破産会社を債務者とする極度額五〇〇〇万円の第五順位の根抵当権(共同担保・以下「本件根抵当権」という。)の設定を受けていたところ、平成一一年五月六日、本件根抵当権設定後の本件不動産の取得者という訴外杉本智彦(以下「智彦」という。)から原告が本件根抵当権を放棄することを条件として三五〇万円の弁済(以下「本件弁済」という。)を受けた、というものであった。

6  原告が智彦から本件弁済を受けるまでの事情は、次のとおりである。

(一) 原告は、破産会社との間の銀行取引によるいっさいの債権及び原告が第三者から取得する手形上、小切手上の債権を被担保債権として、破産会社によるその弁済を担保するため、昭和六三年四月一五日付け根抵当権設定契約証書(以下「本件根抵当権設定契約証書」という。)をもって、本件根抵当権の設定を受け、京都地方法務局左京出張所昭和六三年四月一六目受付第九三七〇号をもって登記を了した(甲五、六、八)。本件不動産は、本件根抵当権設定時においては、土地は喜代恵の所有、建物は訴外高橋修と京一の共有(持分はそれぞれ四分の三と四分の一)であり、原告はこれら三名から本件根抵当権設定を受けたのであるが、その後平成三年九月二〇日に京一が訴外高橋修の持分を相続により取得したため、破産宣告時においては、土地が喜代恵の所有、建物が京一の所有になっていた(甲五、六)。

(二) 喜代恵及び京一は、本件根抵当権設定契約証書をもって、その被担保債権について、破産会社と連帯して保証債務を負うことを約した(甲八)。したがって、破産宣告時においても、右両名は破産会社の連帯保証人であった。

(三) なお、本件根抵当権設定契約証書一一条四項には、根抵当権設定者・保証人が代位取得する権利についての不行使及び無償譲渡の定めがある(甲八)。

(四) その後、平成一〇年四月二三日付け売買を原因として、本件不動産の土地については平成一〇年四月二七日付け京都地方法務局左京主張所受付第九八三九号をもって、建物については平成一〇年四月二七目付京都地方法務局左京出張所受付第九八四〇号をもって、それぞれ智彦宛に所有権移転登記がされた(甲五、六)。

(五) 平成一一年五月頃になって、智彦から、本件弁済と引換に担保抹消の申出があり、原告は、本件不動産の評価及び先順位担保権を考慮してこれに応ずることとし、平成一一年五月六日、原告は智彦から一部代位弁済として本件弁済を受けて、本件根抵当権を放棄し、同日その登記を了した(甲五ないし七、弁論の全趣旨)。

(六) 智彦からの本件弁済の受領に際して、原告は智彦から代位権放棄に関する念書を受領した(甲九)。

二  争点

本件弁済は本件破産債権を減少させるか否か。

第三  争点に対する判断

前記争いのない事実等(第二の一)によれば、本件弁済は、破産宣告後に、本件不動産の第三取得者である智彦からされたものと認められる。

そうすると、破産法二四条は、その文言に照らし、破産宣告後に、破産者以外の他のいわゆる全部義務者から破産手続以外の弁済を受けた場合には、破産債権者(原告)の債権は影響を受けないものとする趣旨を規定したものと解すべきであって、本件のように、いわゆる全部義務者以外の者からの弁済は、破産債権者(原告)の債権に影響を与え、その債権を減少させるものというべきである。

原告は、前記争いのない事実等にある智彦の立場(第二の一の6)からみて、本件弁済は本件破産債権を減少させるべきではない旨主張するが、右主張は、破産法二四条の文言に反するものであって、当裁判所は原告の右主張には賛同しない。

よって、本件弁済によって、その部分の原告の破産債権は減少したものと認められる。

第四  結論

以上によれば、原告の請求は理由が無い。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例